ナースの自己表現を不自由にしている背景

看護婦二人

ナースという職種の人が、他の職種の人に比べてとりわけアサーティブ(自己主張の強い)ではないかどうかは、比較研究してみなければ何ともいえません。

ナースのなかには、もちろんアサーティブに仕事をしている人も大勢います。しかし、ほとんどのナースは、アサーティブでないときもあるけれど、アサーティブにやれるときもある、というのが実際のところでしよう。とはいえ、ナースには自己表現をする上でいくつかの共通の足かせがあるように思われます。

ナースのどのような背景が、自己表現のあり方に影響を及ぼしているのでしょうか。

人の役に立ちたいという気持ちが強い

人の役に立つ仕事がしたくてナースの道を選んだ、という人は多いと思います。そのような気持ちをもつことは、ナースとして仕事をする上でとても大切なことです。しかし、その気持ちが強すぎると、自分を抑えて相手を優先するという行動をとってしまいがちです。

また、自分にはできないことや引き受けたくないことであっても、嫌とは言えずついつい引き受けてしまいます。あるいは、断るにはどうすればいいかを悩んだり、たとえ断ることができたとしても、断った自分を責めてしまうことになりがちです。

一方、人のために自分のことを我慢したり、無理をしたりすることが続くと、そのストレスがたまり、持ちこたえられなくなります。そして、「こんなにやってあげているのに」「私がどれだけ我慢しているか少しもわかつてくれない」と、相手を責める気持ちが強くなり、一転攻撃的になるということもあります。

また、相手以外の第三者に八つ当たりをしてしまう、ということも起こります。

また、人の役に立ちたい気持ちが強すぎると、自分が患者のためにと思って看護していても、患者にその成果が見られないようなときに、場合によっては患者を責めるといった行動をとることがあります。人の役に立ちたいという気持ちをもつことばすばらしいことですが、それが裏目に出てしまっては、何にもなりません。

患者の権利を重視する

ナースは、職業の特性から、倫理観を高くもつことが要求されています。したがって、基礎教育の段階から、患者の権利を重視しなけれぱならない、ということが強調されます。言うでもなく、倫理的感性を高め、患者の権利を守ることはきわめて重要なナースの役割です。しかし、それに比べて、基礎教育においても現場においても、ナース自身の権利を守ることも大切であると教えられることは少ないのです。

そのために、患者の権利を守るという意識に比べ、ナース自身の権利を守るという意識が相対的に低くなっているようです。ですから、患者の言動によって自分自身が深く傷ついたとしても、それを表現しません。しかし、表現しないで自分の気持ちを抑えることは、自分の権利を自ら侵してしまうことです。

そのようなことが続くと、自尊心が保てなくなり、燃え尽きてしまったり、心身に変調をきたすといった症状を呈することにもなりかねません。

共感的なやさしいナースであらねばならない

看護の対象者である患者やその家族は、ナースに対して、何でも受け入れてくれる、わかってくれる、やさしくしてくれるということを期待します。ナース自身も、患者の心に寄り添えるナースでありたいという思いをもっています。しかし、共感的でありたいと思っても、患者の状況によっては共感できないときもあります。

そのようなとき、「患者が間違っている」と怒り、攻撃してしまい、後でそのような「やさしくない」自分を過度に責めてしまいます。逆に、やさしいナースであろうとしすぎて、たとえば病院のルールを守らない患者やナースに対して攻撃的な態度をとる患者に対しても、アサーティブに対応できない、といったことになってしまいます。

共感的でなくてはならない、受容的でなくてはならない、やさしいナースでなくてはならない、という気持ちが強いと、自分のなかにおいてきた否定的感情が受け入れられず、抑圧してしまうと、うことが起こります。しかし、自分のなかにおいてきた否定的な感情に気づき、そのような感情がなぜ生じたのかを検討することは、実は患者の気持ちをより深く理解する手がかりになるのです。

たとえば、病気が思うように回復しない患者が、自分はどうなってもいい、と投げやりな態度を示したとします。患者の回復のために懸命になっているナースにとっては、そのような患者の気持ちが受け入れられず、自暴自棄になっている患者が許せない気持ち、前向きになれない患者を責める気持ち、いらいらした感情などがわいてきます。

そのようなとき、自分のなかにおいてきたその気持ちにしっかりと向き合えれぱ、実は自分の感じていた気持ちは患者の気持ちでもあるということに気づくことができます。そして、いらいらし、無力感を感じて途方にくれている患者の気持ちに心の底から共感することができるのです。

しかし、自分の感情を抑え、こんな否定的な感情を患者に対してもってはいけないと思ってしまうと、患者の深い理解ができないままになり、表面的な取り繕った関係しかできなくなってしまいます。

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