優秀な看護師の思考を探ると問題解決法が簡単に見えてくる訳

看護師の思考と問題解決

看護業務の中で起きた問題に対しては、解決に向けて、どのように思考していけばよいのだろうか。

問題解決とは、簡単に言えば「原因を考え、解決策を立て、実行する」という流れである。起きた問題は、結果である。結果には、必ず原因がある。原因があれば、解決策もあるはずだ。

看護現場における問題解決の流れ

ここで大切なのは、結果から、短絡的に原因や解決策を探るのではなく、あらゆる可能性を考えるために、まず「分ける」ことである。そしてその中から「選ぶ」という思考プロセスをたどる。看護業務では、看護計画を立てて実施するが、そのプロセスは次の通りである。

看護計画の流れ

  1. 患者の現状を把握したうえでアセスメントする
  2. アセスメントに基づき看護診断し、看護問題を明確化する
  3. 看護計画を立て、計画に基づき実施する
  4. モニタリングし、改善する

つまり、[現状把握→アセスメント→問題の解決t→プラン作成→実施評価]という流れである。問題解決も、このプロセスと同じである。

看護計画と問題解決のステップ比較

看護計画と問題解決のステップ比較

出典:問題解決の8つのステップ

問題解決の流れ

  1. 現状をよく観察し、解決すべき問題は何かを明確にする
  2. なぜそのような問題が発生しているのか、原因を考える
  3. 原因が特定されたら、解決策を立て実行する
  4. モニタリングしながら、改善していく
  5. ケーススタディー問題解決の流れ

ここで、A病院の看護師長と看護部長の会話から、看護現場での残業問題解決の流れを見てみよう。

事例:残業問題解決までの流れ

A病院(約200床)に勤務する山下さんは、内科B病棟に勤務する新米師長である。山下師長は、日勤から準夜勤への申し送りが始まる頃になると、胃が痛むような思いをしていた。

申し送りの後に、近藤看護部長のもとへ病棟管理の報告に行かなければならないからである。

問題解決ステップ1 現状把握、課題認識

山下師長:本日は入院患者38名、入院退院は0、空床は3床です。昨日も看護業務が終わらす看護師3名が1時間ほど残業しました。

近藤看護部長:あなたの病棟は残業が多いですね。院内でも問題になっていますよ。

山下師長:それは私も認識しています。でも皆、がんばっているんです。スタッフも人を増やしてほしいと言っています。増員できないでしょうか?

近藤看護部長:(あきれた様子で)「残業が多いから人を増やしてください」とは、表面的で安易な依頼です。残業が多い原因は、本当に人手がたりないからですか?あなたは、新人看護師が看護計画を立案する際、どのように指導しているのですか?
いきなり解決策を立てさせないでしょう?

山下師長:そうですね……。よく患者を観察するように説明します。

近藤看詩護部長:問題解決も同じですよ。まず、観察すること。つまり、あなたの病棟で何が起きているのか、しっかり現状把握してください。

山下師長は現状分析をせず、「スタッフが言っているから」「皆、がんばっているから」という表面的な状況だけで看護部長に直訴した自分を恥じた。そこで看護部長が言ったように、まず現状をしっかり見ることにした。

本当に残業が多いのかを分析するために、B病棟と同じような疾患の患者が入院し、在院日数もあまり変わらないC病棟に残業時間を比較させてもらった。

日勤の看護師が申請した残業時間を、1日ことに合計しグラフ化し、その結果、C病棟では月平均1日2時間の残業時間であるのに対し、山下師長が担当するB病棟は1日平均4.1時間であった。

残業が発生する日にち傾向の違いが見られた。C病棟では日勤終了間際に入院患者がいたり、検査が多く患者の帰室時間が遅くなるなどのイレギュラーなイべントが発生した場合に残業が増える傾向がある。一方、B病棟では、常に残業が多い傾向が見られた。つまり、残業が慢性化していることがわかったのである。

問題を明確にするために、山下師長は、解決すべき問題を書いてみた。

当病棟(B病棟)は、類似したC病棟と比較し、残業が慢性的に多く発生している。 慢性的な残業を減らすにはビうすればよいのか?

このように文章にすると課題が明確化し、解決しなければならないという意欲がわいてくるのであった。
山下師長が実践したように、問題解決は、看護計画の実践と同じプロセスである。事実と科学的根拠に基づいて看護計画を立てて実践していくのと同様に、問題解決では論理的思考力とそれに基づいた情報収集分析、コミュニケーションカなどが必要である。

まとめ 問題解決型思考の基本的スキル

問題解決型思考は、次の5つの基本スキルを学ぶことによって、誰でも習得することができる。

5つの思考スキル

ゼロべース思考

思考を柔軟にし、行き詰った思考を広げるスキル。
経験や知識から得られた既成概念を取り去り、柔軟に思考するために役立つ。過去の看護経験や人生経験にとらわれ過ぎると、ついつい狭い範囲で思考してしまい、発想力が失われがちになる。思考の世界を広げて可能性を追求することで、新たな答えが見えてくることがある。

論理思考

思いつきや感情ではなく、論理的に思考するスキル。
筋道を立ててものごとを考える際に役立つ。看護師は相手の感情を読みとったり、感情面で訴えることが得意な人は多い一方で、論理的に思考したり伝えたりすることには、苦手意識を持っている人が多い。

苦手ゆえに、上司や医師に感情的な意見を言ってしまうことがあるかもしれない。論理思考を学ぶことで説得力ある説明ができるようになり、感情思考から脱することができる。

仮説思考

時間と質において、効率を上げるスキル。
その時点での仮説を持って、課題解決に取り組む際に役立つ。何かを決断する場合、「もし、失敗したら……」などと考え行動を躊躇して、なかなかものごとが進まないことがある。

仮説思考とは、裏づけのあるデータやインタビューなどの事実から何をすべきか検証し、行動を進化させていく思考である。この思考を学ぶことにより、行動のスピードが上がる。

MECE (Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)

混乱した頭を整理するスキル。
ものごとを、モレなくダブりなく整理する際に役立つ。ゼロべース思考、論理思考、仮説思考の3つの思考法によって凝り固まった思考力(考え)を解きほぐし、解の深さと幅を広げ、MECEに整理していく。

ロジックツリー

表面的ではなく、問題を深掘りするスキル。
MECEで整理した内容を基に、ものごとを深掘りし、さらにわかりやすく整理する際に役立つ。箇条書きではなく、MECEやロジックツリーを用いることにより、体系立った整理ができる。

問題の原因や解決策を考える際に、行き当たりばったりに突き進むのではなく、全体像をつかみ、体系的に整理し、問題解決を推し進めていくために必須の技術である。

難題にぶつかった時、この5つの基本スキルを意識して、現在の思考習慣を変えることから始めてみよう。

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