看護師の求人は内科が一番多いが思うほど楽ではないらしい

内科に勤務する看護師

日本の病院では内科を標榜する病院が最も多く、従って看護師の求人も内科がとても多い。しかし、ひと口に内科といってもさまざまな専門内科があるのは周知のとおりだ。これらの内科を受診し、あるいは入院する患者はその多くが高齢者である。高齢の上に慢性疾患をいくつも抱える患者の病状管理や治療以外のケアに手間がかかるので、内科は思うほど楽な診療科ではない。

また、内科の患者たちは慢性病の治療のために食事や趣味嗜好の制限を受けたり、体の一部が動かしにくいなどの不自由さを抱えており、QOLの低下による苦痛やストレスを余儀なくされている。内科の多くを占めるこのような患者には、看護師による心身両面でのケアが必要とされている。

内科の看護師の求人は多いが、そのぶん苦労も多い。転職するならば、待遇面以外に内科のどのようなところにやりがいを見いだせるのか、あらかじめ考えておくべきだろう。

1-1 日本でいちばん多い診療科目

厚生労働省の調査によれば、全国で活動中の医療施設は177,769施設(平成25年時点)あり、400床以上の特定機能病院と200床以上の地域医療支援病院を除いた一般病院は7,474施設であった。一般病院のうち「内科」を標ぼうする病院が最も多く6,879施設にも上り、92%の一般病院には内科があるということになる。

病院の診療科目別にみた施設数(重複計上)

病院の診療科目別にみた施設数

出典:厚生労働省

内科とは別に標榜されている専門家内でいちばん多いのは消化器内科で、以下、循環器内科、呼吸器内科、神経内科、糖尿病内科、腎臓内科、心療内科と続く。日本人に多い病気の診療科が専門内科として院内に増え始めているといえよう。

たとえば呼吸器内科だが、日本人の死因は30年以上、がん、心疾患、脳血管疾患がトップ3だったが、平成に入ると肺炎が増加し始め、平成23年には脳血管疾患を抜いて3位となった。この現象は日本の急激な高齢化と見事に一致しており、肺炎の増加は社会の高齢化に起因するものと推察される。また、肺炎に加えてCOPDや肺がんの増加、嫌煙ブームの到来などにより禁煙外来が増えたこともあって、呼吸器内科もまた増加傾向にある。

1-2さらに増え続ける専門内科
近年CKD(慢性腎臓病)の患者が急増しており、今後も増え続けることが予想されているが、これはいうまでもなく、糖尿病や高血圧などメタボリックシンドロームを原因とするものだ。CKDと比例して透析患者も年々増加しているが、透析患者の4割以上が糖尿病を基礎疾患とする糖尿病性腎症となっている。

慢性透析患者数の推移

透析患者数の推移年齢別透析患者の主要原疾患の推移

年齢別透析患者の主要原疾患の推移出典:厚生労働省

CKDの推定患者数は1300万人と推定されているが、CKDの進行は血圧の上昇を招き、心血管系のイベント発生率を3倍に高めるといわれている。入院して初めてCKDと診断され、即刻透析となるケースも少なくない。

2-1増え続ける内科の患者

内科では外来、入院ともに患者が高齢化しており、かつ基礎疾患のほかにいくつも慢性病を抱えていることが多い。厚生労働省による傷病別の外来分類では高血圧が66万3千人と断トツに多く、次いで腎臓26万6千人、糖尿病20万8千人、悪性を含む新生物22万人と続く。

一方、入院患者は脳血管疾患の17万2千人がいちばん多く、次いで新生物15万人で、腎臓病、糖糖尿はそれぞれ4万8千人、2万4千人であった。いずれにしてもこれらの病気は単独で起こるものではなく、それぞれが複合して病気を形成しているので、治療も患者の状態に合わせて行う必要がある。

外来患者は、健康診断や人間ドックで受ける内視鏡検査や血液検査のマーカー値から、精密検査を勧められて受診に至るのがふつうである。病気の早い段階で診断を受ければ食事指導と運動などの生活改善で病気は軽快するが、外来受診時すでに処置が必要なケースも多い。心血管疾患やCKDがその典型だろう。悪性新生物も健診で発見されたときにはすでにステージがかなり進行している場合がある。

しかし、入院患者を見ると外来とは異なり、脳血管疾患の患者が多い。脳血管疾患では健診で発見される中年世代と違って、高齢者が突然倒れてそのまま入院に至るケースが多いからだ。

がんについても同様で、死因別でみると成人男性は肺がんがトップだが、女性では大腸がんがトップで、男性でも第3位となっている。これは大腸がんの発見が遅れて、がんと診断された時点ですでにステージⅡ~Ⅲまで進行しているケースが少なくないためと推察される。検診で便潜血反応が出ても放置していた、という患者が後を絶たない。

2-2内科の患者と向き合うには

生活習慣病は長い期間をかけて未病の状態から慢性病へと進行するが、治療にもまた長い時間と根気が必要である。

患者自身は病気の原因を自分がまいた種とは考えていないことが多く、「なんで自分がこんな思いをしなきゃならないのか」と感じていることが多い。彼らの大半は人生の後半、あるいは終盤にさかかっているが、これまでの人生を大過なく過ごしてきた。

親の面倒を見て、家族を養い、仕事一筋に生きてきたまじめな男性が多い。奔放な食生活と運動不足を除けば、だ。だから、自分の病気を理不尽に受け止めており、さらに生活指導やリハビリで精神的にストレスを受けている。

そんな内科の患者を担当する内科の看護師には、病気を看るのではなく、「病人を看る」心構えが必要だろう。慢性病の治療で重要なのは我慢と忍耐、そして治療に前向きであることだ。病人の心に寄り添い、前向きな気持ちで治療に臨めるよう患者をケアすることが求められる。

3-1医師不足が招いた日本の医療クライシス

日本の医師不足を招く直接の原因となった「医療費亡国論」は、長らく厚生労働省と日本医師会にはびこっていた。いわく「医師が増えると患者が増える。だから医師そのものと職場である病院は削減しなければならない。」

しかし、2003年に臨床研修医制度が導入されると、いよいよ医療現場は過酷なものとなり、最前線の勤務医から悲鳴の声が上がり始めた。新人研修医は、2年間すべての診療科で研修を受けることを義務付けられたのである。研修医は2年間、正規の医師になれないため、臨床の現場ではそれまで新人研修医が受け持っていた仕事をすべて中堅医師がこなさなければならなくなったからである。

もとより医療費亡国論で医師不足を招いた上に、この研修医制度である。現場の勤務医は時間外勤務100時間超えが日常となるような過酷な労働を強いられることになった。このままでは日本の医療は崩壊する、との声があちこちで叫ばれ始め、2007年、ようやく日本医師会が医師の絶対数不足を認めて方針を転換させた。すると厚労省もこれに追随、2008年にそれまでの方針を一変させ、医師の養成増へと流れが変わった。

3-2解消されない看護師不足

一方、看護職の不足も長く続いているが、これに7対1入院基本料など診療報酬制度の改定が、今度は看護師の偏在に拍車をかけた。

近年の診療報酬の引き下げはいうまでもなく財源不足によるもので、看護師の数と入院日数の規制は医療削減のための策である。このルールに基づいて診療報酬に格差をつけたために、7対1が実践できる環境にある大病院がこぞって看護師の確保に乗り出したため、都市部ではさながら看護師争奪戦の様相を呈した。

これにより地方の病院では看護師が確保できず、診療報酬は引き下げられ、患者が減って閉鎖や統合の憂き目に遭うようになった。そのおかげで、一部の大病院を除いて医療の現場環境はますます過酷劣悪なものとなり、看護師の仕事は3Kから9Kとまでいわれるようになってしまい、看護師の離職に歯止めがかからない。

3-3不足する看護師と増え続ける高齢患者

現在、新卒看護師は毎年増加傾向にあるがそのうちの約1割は1年以内に離職してしまう。一度離職した看護師の多くが医療への復職を希望せず、看護師の需給バランスは崩れたままだ。

第7次期間の看護職員需要見通しと就業者数

第7次期間の看護職員需要見通しと就業者数出典:厚生労働省

現在はまだ新卒看護師は増加傾向にあるが、少子化の日本では近い将来看護師のなり手自体が不足してくる。そのため、離職した看護師をなんとか復職させようと看護業界の現場環境改善を求める声が各方面から上がりつつある。

このように不足する医師と看護師だが、一方で生活習慣病患者と高齢者は恐ろしいほどのスピードで増え続けている。看護師だけでなく、内科の患者に相対するコメディカルが圧倒的に不足している中で、医師からコメディカルに権限が委譲されないため、チーム医療とは名ばかりで、役割分担ができず医師ひとりに責任と判断が集中している。

今後の内科医療チームでは看護師の役割と存在感が一層大きくなることは必須だが、これは病棟の看護師だけでない。在宅医療が推進される中で、地域連携の要として外来、あるいは訪問看護の看護師たちも新しい局面を迎えているのである。

4-1地域医療連携と看護師

外来で勤務する看護師は日勤が基本で、重篤な患者も少なく急変対応もほとんどない。なので、一見すると楽な仕事に思えそうだが、生活習慣病の蔓延と患者の高齢化は、医療者・看護者に別の負担増をもたらしている。

医療費亡国論によって地方の病院が多数口減らしされ、医師の数も抑制され続けてきた。この間に日本の超高齢社会化は進み、医師不足、看護職不足の病院だけでは対応しきれなくなってきた。自らまいた種だが、財源不足と医療者不足に頭を抱える厚生労働省により打ち出されたのが在宅医療の推進である。

在宅医療は患者にとってのメリットもあるが、厚労省の思惑としては入院を減らして医療費の削減につなげたい考えだ。在宅医療は入院治療と違い、クリニックや地域の小規模病院がメインのかかりつけ医となって、地域医療支援病院と連携しながら治療を進めていく。

患者には骨折や関節疾患も多いが、圧倒的に多いのは生活習慣病や術後のがん患者など内科担当の患者である。これらの患者は、病院やクリニックの診療を受けながら栄養指導や訪問リハビリなども受ける。そして、在宅医療の中心となるのが訪問看護ステーションだ。

厚生労働省 全国で行われている医療連携の事例より

しかし、この医療連携ネットワークがうまく機能するには、中心となるリーダーが必要だ。クリニックの医師は難しい判断を求められても対応できない。そのための中核支援病院なのだが、病院側の受け入れ体制がしっかりしていないとリーダー不在で機能不全に陥る可能性がある。

また、ひとつの中核病院に対して拠点となる診療所や訪問看護ステーションが複数あるため、患者ごとに連携する相手が異なることもある。こうした複雑な連携ネットワークにうまく対応していくために看護師にはキーパーソンとしての役割が求められている。

4-2入院患者のQOLと病棟看護師の役割

一方、内科の入院患者は急性期か慢性期のいずれかが多く、亜急性期にある患者は半ば強制的に退院させられていく。急性期は脳卒中や心疾患の患者が多く、慢性期は脳血管疾患のリハビリや、透析など合併症のある患者が多数を占める。いうまでもなく高齢者が大半で、認知症の患者も多い。看護師は患者たちのQOLを下げないような対応を求められる。

慢性期/療養病院の患者は病気による痛みや苦しみよりも、治療に関わる苦痛や極端に制限された食事、思うようにならない不自由な身体など、肉体的精神的ストレスを強く受けている。患者たちは精神の安定を欠き、医師や看護師に暴言を吐いたり、時には暴力をふるうこともある。こうした病棟の現実に対処しつつ、患者のストレスや精神的苦痛を取り除くことが看護師の重要な仕事になっている。

また、患者の要介護度は総じて高く、食事や排せつの介助やおむつ替え、ベッド上でのポジショニングなども仕事に含まれる。多くは力仕事で、病棟での看護は他の診療科に比べて内科が楽、などということは決してないだろう。

まとめ

内科の患者の典型は、糖尿病や高血圧といった生活習慣病から合併症を併発し、あるものは脳卒中で、あるものは心疾患で、そしてあるものは腎臓病により普通の生活ができなくなっている。かれらは心と体の自由を失い、その苦痛がさらに病気を増悪させていく。

近代看護の祖であるナイチンゲールの言葉「看護とは、患者に新鮮な空気と太陽の日差しを与え、温かさと静けさを保ち、身体を清潔にして健全な食事を与えること」は、つとに有名だ。

そして、その前文には「もしも患者が冷たく、あるいは熱があり、衰弱していたら、もし食事を摂った後も具合が悪く、褥瘡があったならば、多くの場合それは病気のせいではなく、看護に問題があるのです」とある。

「病は気から」ということわざがあるように、気持ちが病気に大きな影響を与えることが大阪大学と科学技術振興機構によって明らかにされている。病気の治癒に必要なのは薬や手技だけではなく、精神の安寧が不可欠なのである。

それだけではない。患者の苦痛の大半は病気そのものによってもたらされるのではなく、病気のためにもたらされた環境によるものなのだ。

看護師の役割とは、患者の苦痛をやわらげ、あるいは取り除くことにある。内科にあって看護師の看護とはまさに治療そのものなのだ。

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