ナース同士でアサーテイブに自己表現できない事例多数

自己表現できないナース

自分の提案に反対するべテランナースに反論できない新任師長

看護師長に昇格したAさんは、内科病棟に配属されました。初めての師長の仕事に戸惑いながらも、よりよい病棟にするために張り切っていました。師長業務にも少しずつ慣れてきたある日、A師長は病棟カンファレンスで、病棟改善のひとつとして、朝の申し送りの大幅な時間短縮を提案しました。

申し送りの時間が長いことが、午前中の業務を圧迫していると考えたからです。実際、前に働いていた病棟でそのやり方を取り入れ、うまくいった経験もあります。すると、スタッフの一人でこの内科病棟に15年間勤務しているべテランナースBさんが、厳しい口調でこう言いました。

「申し送りの時間は私たちにとって大事な情報交換の場なんです。ゆっくり患者さんの話をする時間は他にはなかなかとれないのです。A師長はこの病棟のことがまだよくわからないのに、前にいた病棟のやり方を私たちに押しつけないでください」

A師長は、

「押しつけるつもりはないのよ。朝の申し送りを短くすれぱ、その分、看護業務に時間を割くことができると思って提案したの」

と、言いましたが、Bナースは、

「私たちはこれでいいと思っていますから」

と、聞く耳をもたない様子です。

Bナースは長年この病棟で働いていて、スタッフにも信頼されています。A師長は、もう少し自分の考えを言いたかったのですが、Bナースの強い態度に押され、それが言えないままカンファレンスを終えました。

この事例は、新任師長とべテランナーズとの間で起こった葛藤の場面です。A師長は、師長としては新人であり、内科病棟に配属されて問もない師長です。これに対しBナースは、この病棟のなかで起こるさまざまなことに精通し、スタッフにも信頼され、リーダーシップを発揮しています。

A師長は、そのようなBナースと対立関係になりたくない、と思いました。また、他のスタッフもBナース同様反対の意見をもっていれば、他のスタッフも自分を受け入れてくれないのではないか、と不安になりました。そのため、A師長は自分の意見をそれ以上言うことを抑えてしまったのです。

しかし、いくら新任だとはいい、その病棟の師長です。また、師長がそのような提案をしたのは、ナースにとっても、患者にとってもよりよいやり方であると考えたからであり、よりよいやり方に改善したいという気持ちはスタッフも同じはずです。

また、外から来た者だからこそ、気づく問題もあります。ですからA師長が自分の意見を言わなければ、結局提案に対する意気込みもその程度であったのか、と思われても仕方ありません。

看護師長から休暇を返上してほしいと頼まれ、断れないナース

病棟に病欠者が出たので休みを希望していた日に勤務についてほしい、と師長から頼まれました。しかし、その日は一人娘の小学生最後の運動会の日でした。ここ数年、運動会の日に勤務の都合がつけられず、見に行ってあげられなかったので、娘から「お母さん、今年こそは絶対見に来てね」と、言われていました。

自分としても、娘の小学生最後の運動会であり、娘の姿をこの目で見たくて、何としても応援に行きたいと思っていました。しかし、今の病棟は、中途退職者が出たまま少ない人数でやりくりしている状況です。自分が休みを返上せず少ない人数での勤務になれば、他のナースがたいへんになるし、その分患者さんにしわ寄せがいくことになります。

師長が困っているのもよくわかります。しかし、今年はどうしても運動会に行きたいので、いっそのこと「夫が行けないから自分が行くしがない」といった理由をつければ、うまく断れるかな、とも思いました。しかし、そう言えば言ったで後ろめたい気持ちになりそうです。

悩んだ末、結局、断りきれず勤務を引き受けてしまいました。そして、娘のがっかりした様子が目に浮かび、憂うつな気持ちになりました

このように、業務のこと、患者さんのことを考えると、なかなか自分の都合を主張することができず、しぶしぶ依頼を引き受けてしまう、といった体験をもつ人は多いのではないでしょうか。

攻撃的なコミュニケーシヨン

ナース同士の関係のなかで起こる攻撃的なコミュニケーションの事例です。

期待通りにできない新人に皮肉を言うプリセプター

苦悩するナースCナースは、経験三年目のナースです。今年初めてプリセプターとして新人教育を行っています。プリセプターとは、新人ナースを受け持って、一対一で教育する先輩ナースのことです。

Cナースが新人Dナースの指導を始めて一か月が経ちました。Dナースは他の新人ナースに比ぺて仕事がなかなか覚えられません。処置のときに使う物品を何度も準備し忘れるし、仕事の手際も悪いのです。

これまでCナースは、Dナースを過度に緊張させないように気を遣ってきました。叱ると小さくなって、よけいにうまくいかないので、あまり叱らないようにも配慮してきました。

しかし、一か月も経つと我慢も限界に近くなってきました。他のスタッフから「新人をちゃんと指導しているの?」と言われ、自分は気を遣って一生懸命指導しているのに、何でこんな思いをしなけれぱならないのか、腹が立ってきたのです。

そしてこのごろでは、Dナースが小声で質問するとわざと聞こえないふりをしたり、怒りっぽい医師の処置介助を担当させたり、「こんな仕事の仕方をしていても給料がもらえる人がいるんだあ。いいわねえ」と、皮肉っぽくつぶやいたりするようになりました。

そして、そういう態度をとった後は、いつも自己嫌悪に陥るのでした。

期待した通りにできない新人ナースに対して攻撃的に対応する先輩ナースの事例です。Cナースは、言葉を荒げたり、怒鳴ったりはしませんが、無視する、相手を自分の思い通りに動かそうとする、皮肉を言う、といった形で新人のDナースを攻撃しています。

プリセプターシップでは、一対一で指導するので、新人が成長しないとプリセプターが周囲から責められる、と、うことはよくあることです。そういう意味で、Cナースはたいへんです。

孤独な気持ちにもなります。Cナースは、当初Dナースを気遣い、ていねいに指導していましたが、思うように成長しません。一か月が過ぎ、たまったストレスをこのような形で表現してしまったのです。

Cナースは、いい先輩であらうとして、よく頑張ってきました。しかし、思うようにならない新人をみるにつけ、自分が頑張っているだけに、よけいにいらいらしているようで、このように、新人指導において、新人もプリセプターもどちらもつらい状況に陥っている、ということが、しばしば起こっているようです。

まとめ

相手から突然不当な怒りをぶつけられると、萎縮して非主張的になってしまうことがめるでしよう。そのときに適切に自己表現できないと、この事例のように後でそれがしこりとなって、攻撃的な態度に転じてしまう、というのはよくあるようです。

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