小児科看護師の求人情報を入手するための心の準備の仕方

小児医療

現代の医療現場における産科と小児科の状況は危機的だ。日本では晩婚化、非婚化が進み15歳未満の子どもは極めて少ないのに、小児科は慢性的な医師不足だ。不足している小児科医を増やさなければならないはずなのに、診療報酬が他の診療科よりも安く設定されているため、新人医師から敬遠されて小児科医のなり手がいない。

ほかにも医師から小児科が敬遠される理由はあるのだが、一方で看護師からは人気の高い診療科でもある。だが、そもそも小児科自体が少ないので、求人倍率が高く小児科の看護師になるのはむずかしい。子どもが好きだから、というのが小児科を希望する理由だが、未来ある子供の生命を守りたいと思う看護師が多いのも事実。

小児科で働くために求人のチャンスを少しでも広げるにはどうしたらいいのだろう。

どういう心構えを持つことが、小児科で限りなくストレスを抑え働くことができるのか?その基礎と対策をこの記事でご紹介しよう。

1 医師不足の背景にあるもの

小児科に限らず医師自体の数は決して不足しているとはいえない。実際、平成16年に新人医師の臨床研修制度が導入されるまでは、新人医師の配属は大学主導で進められていたため、診療科への配属はある程度均一化することができた。ところが、臨床研修制度が義務付けられて新人医師に研修場所の選択権が与えられたため、地域や診療科間での医師の偏在が一気に進んでしまった。

さらに、医師の名義貸しと研修医のアルバイトが実質禁じられたため、研修期間中の2年間はいわば新人医師不在の空白期間となってしまい、実質的な医師不足を招く結果となった。特に地方の医師不足は顕著で、医師を確保できず廃業や統合に追い込まれる病院が後を絶たない。

厚木恵心病院

出典:厚木市:旧厚木恵心病院跡地の進ちょく状況

1-1 小児科は病院の3Kか

このような医師不足がある中で、日本は少子化が進み出生率は1.4近辺で停滞している。子どもの数が少ない上に、診療報酬の低い小児科は病院のお荷物となってしまい、結果として小児科をもたない民間病院が増えている。また、人口の減少と高齢化が顕著な地方都市の国公立病院では小児科を統合するケースが増えている。

入院している子どもたちにとって、病棟は生活の場でもあり、心や身体のケアも必要だ。そのために保育士や養護教師などを配置すれば、その人件費は診療報酬からは支払われないため病院の負担となる。子どもたちのケアを手厚くすればするほど病院の経営を圧迫し、赤字を増やすのが小児科の現状である。だから今、小児科は病院から消え始めているのだ。

それだけではない。いうまでもなく、小児科の患者は100%子どもだ。子どもは大人と違い自分の病気を自覚することがむずかしく、病状について本人が説明することはできないことが多い。また、身体が小さく血管も細いため、点滴ひとつとってみても針が入りにくかったり、注射器を見ただけで泣き叫んだりと、その手間は大人の患者とは比較にならない。

投薬の量や間隔にも細心の注意が必要だし、病状が急変する事も多く細かな病状の管理が求められるため、夜間も目が離せない。「きつい、きたない、給料が安い」の3Kでは新人医師が敬遠するのも無理はない。今、小児科は診療科だけでなく医師も減り続けているのである。

1-2 少子化と核家族化

日本の少子化は高齢化とセットになっているが、同時に核家族化も当たり前になっている。日本では核家族化、少子化、高齢化が同時進行しており、人口が減少しているのに世帯数は増えるという不思議な状況にある。世帯数の増加もそろそろ頭打ちといわれているが、かつてのような2世帯、3世帯の大家族が復活しているわけではない。

世帯数と平均世帯人員の年次推移

 

出典;世帯数と平均世帯人員の年次推移(厚労省:平成26年国民生活基礎調査)

世帯数と平均世帯人員の年次推移(厚労省:平成26年国民生活基礎調査の概況より)
多くの場合、祖父母は別の家に暮らしており、誕生日や正月などのイベントがなければ顔を合わせることは少ない。子どもにとって祖父母は身近な存在ではなく、1年に数回顔を合わせる程度の「親戚」と化しつつある。祖父母と子どもは日常的な交流を持たなくなってきているのだ。

2 相談できる人がいない育児不安

核家族化が当たり前となり、さらに少子化で一人っ子も多い。母親は子育て未経験か、多くてもひとり。育児に対して自信が持てるわけもない。かつて大家族で暮らすことが当たり前だったころは、孫を含めて十人を超す子育て経験者の祖母がいたし、地域の近所付き合いも今のように希薄でなく、自分の親だけでなく近所の子育て名人になんでも相談ができたものだ。

現代の子を持つ母親はひとりで子育てと格闘しているために、子どもの状態について判断が下せない。ママ友に相談しようとしても、ママ友も自分と同様、子育て未経験者ばかりだ。だからだろう、今どきの母親はテレビやインターネットから得た知識で子育てに対応しようとする。致し方のないことだが、しかし、それにも限界がある。結局、頼るのは小児科医ということになるのである。

2-1 少しの熱でも救急車

子育て初心者のママたちにとって頼りになるのは小児科医だけなのだが、肝心の小児科医が身近にいない。地方ならなおさらのこと、病院に駆け込んでみたがそこに小児科はなかった、というのは笑えない事実である。自分の母親に電話をしてみるも、電話の向こうで同じように右往左往するか、「だいじょぶ、だいじょぶ」といって取り合わないかのどちらかだ。

ママの不安はいやがうえにも増幅していく。そして、救急車の出動、ということになるのだが、最初はためらっていた救急通報も、回数を重ねるごとになんとも思わなくなるものだ。少しの熱でも救急車を要請するママたちはとても多く、本当に緊急を要するのは救急出動の3分の1程度なのだ。

救急出動の頻度

出典:消防庁の冊子より

だからといって、状況判断のつかないママに救急要請をやめろとはいえない。子どもの病気は生命の危機に直結することが少なくないからだ。しかし、救急車を受け入れるべき小児科は少なく、運び込める病院は限られている。そこに勤務する医師や看護スタッフはおのずと激務になっていき、かくて小児科の3Kは実践されていく。

2-2 モンスターペアレント

病院に入院していても、子どもたちは決しておとなしくなどしていない。点滴をしたまま病院内を入り回る、ベッドの柵を乗り越える、注射器を見て泣き叫ぶ。本当に病気なのかと目を疑うほどだ。しかし、どれほど元気に見えても急変するのが子どもの病気であり、スタッフもそれに備えているのだが、ときには行き届かない場合もある。

急に容体を悪化させたわが子を見て、医師始め医療スタッフのせいだ、と思い込む家族は多い。医師の説明も聞かず罵詈雑言を浴びせる親も多く、中には暴力を振るわれるケースもある。こうした家族とのあつれきや時には医療紛争、訴訟沙汰に発展することもあり、ますます新人医師の足は小児科から遠のいていくのだ。

紛争までいかずとも、入院中日常的に過度な要求をする母親、家族は多い。医療スタッフと患者の関係を、ホテルのサービススタッフと客とでも勘違いしているかのようである。学校だけでなく、病院にもモンスターペアレントははびこっているのだ。

2-3 子供のケアが赤字要因

入院している子どもにとって病棟は治療の場だけではなく、生活の場でもある。成長の途上にある子どもたちは身体も心も不安定になりやすい。当然、勉強や教育に関する問題も解決しなければならない。医師や看護師だけで対応しきれるものではなく、保育士や養護教師などの手を借りなければ子どもたちに十分なケアをしてあげることができない。

しかし、病院に支払われる診療報酬はあくまでも医療行為に対してだけであり、こうした子どもたちにとって必要なはずのケアに対しての対価はゼロである。すべては病院の持ち出しとなり、皮肉なことに子どもたちのためにケアを手厚くすればするほど、病院の赤字は拡大していくことになる。

3 かかりつけ医の復活

小児科を志す医師や看護師は子どもが好きというだけでなく、少なからず子どもたちの未来に貢献したいという意思を持つ。これは即ちこの国の未来に貢献するということなのだが、残念なことに国のほうではその高い志に応えようという気持ちが感じられない。だから、小児科は減少し続けているのだろう。

一方で小児科の診療所、クリニックは増加傾向にある。小児科に限ったことではないが、地域医療連携の推進は日本の医療において急務であり、いわゆる「かかりつけ医」の復活が進められているのだ。

今や絶滅したご近所の子育て名人や、同じ屋根の下にいる子育ての先輩としての祖母に代わって「町のお医者さん」がママたちの不安を解消し、アドバイスを与えてくれる。また、緊急を要する場合には連携する病院への紹介、通報をしてくれるのである。

3-1 小児科看護師の求人は狭き門か

高齢者医療同様、小児科診療において地域連携は欠かせないものであり、今後はその重要性が増してくるだろう。一方でクリニックが増えすぎれば、子どもが少ないだけに過当競争ともなりかねず、行政や国の指導も必要だろう。

3-2 小児科の看護師を目指すなら

少し前に小児病院の統廃合が進んだために、小児専門医療センターなどへ看護職が転職するのは狭き門となっている。しかし、先述したように小児科は看護職にとってもストレスの多い職場であり、急性期病棟の看護師と比べれば低いものの、約半数が抑うつ傾向にあるという。

離職者が出て欠員補充をすることもそれほど珍しくはないが、一般の看護師に比べれば求人倍率は高く、求人情報をいち早く入手するにはナースバンクや専門のあっせん業者に登録しておくのがよいだろう。

また、小児専門病院を志す前にクリニックや自治体病院などの小児科で経験を積んでおくと、転職の際に評価ポイントとなる。夜勤がなくてもよい、という人は、まずクリニックから小児科のキャリアを始めてはどうだろうか。

小児看護の職場は病院やクリニックのほかにも、教育機関、幼稚園や企業の保育所などにもある。しかし、ここでも経験が求められるのはいうまでもない。

最後に

医師たちの間から3Kなどといわれ、母親や家族とのトラブルを懸念して小児科を敬遠する看護師もいる。インシデントやニアミスが起きた場合を恐れることも一因だろう。しかし、子どもたちと看護を通じて心を通わせることの素晴らしさは他の診療科では得られないものだ。

子どもの頃に受けた手厚い看護に感動を受けて、看護師を目指した、という人は少なくない。看護師という仕事は子どもたちの未来を守るための仕事ともいえるだろう。小児科を志すならば、自分の仕事に誇りを持ち、子どもたちの生命と明日をどうかその手で守ってあげてもらいたい。

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